手探りのカステラづくり

 「ゆめカステラプロジェクト」が初めて会議を行ったのは2017年1月。当初は医療や介護の分野に携わっているメンバーが中心で、摂食嚥下障害のある患者さんでも誤嚥しにくいカステラの開発という目的はあったものの、会議は難航した。発起人の三串も何からすればいいのか分からない手探りの状態でした。栄養士が中心となりカステラにとろみを付けた牛乳を染み込ませるなど、さまざまな案を持ち寄り試行錯誤をしていましたが、実際に商品を作り上げるのは難しい状況でした。

 

誰でも親しめるカステラを目指して

 そんな状況を大きく変えたのが、実際にカステラや洋菓子作りを行うプロがメンバーに加入したことです。職人や製造・販売のプロの意見を取り入れることで、商品化に向けての道筋が立てられました。やわらかく食べやすいカステラの試作を会議で何度も試食。やわらかさはもちろん、カステラとしての純粋なおいしさにもこだわりました。プロジェクトにはさまざまなメンバーが集まっており、幅広い分野・年代の意見を参考にしながら検討。そしてついに試作品が完成し、2017年11月にカステラを実際に食べてもらうモニタリングを行いました。

 

食べた人の笑顔を生み出すおいしさ

 参加者の勤務する通所施設でカステラの試食を行い、味や食感、見た目、食べやすさについてアンケートを行いました。その結果はとても良好で「しっとりして美味しかった」、「やわらかくて飲み込みやすい」、「見た目も普通のカステラで食べやすい」など、多くの利用者の方から高評価を得ることができました。
 さらに注目すべき点は、カステラならではの豊富な栄養量です。卵や砂糖、小麦粉などが原材料となるカステラは比較的エレルギー量が多く、また抗酸化作用のあるセレンなども含まれています。栄養量やたんぱく質が不足しがちな高齢者にとって、毎日の食生活に取り入れやすいのも魅力です。また食べやすくするために寒天を使用することで、カステラ本来の味や栄養にほとんど影響を与えることなく、飲み込みやすい食感を実現しました。

幅広い世代に伝える、夢のようなカステラ

 その後もさらに改良を重ねて完成度を上げていき、パッケージやネーミングなども検討されて「なめらかすてら」が実際の商品となりました。誰もが安心して食べられる食べ物を通して、摂食嚥下障害への理解を深める。「ゆめカステラプロジェクト」は、これからも進み続けます。